周産期の死別とサポートについて

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産期とは、
妊娠22週以降をさすことばですが、流産や死産、新生児死などのサポートの世界で、研究者たちは、ごく早い週数から含めて「周産期死別」という場合があります。

2010年厚生労働省人口動態調査のデータでは、
周産期死亡数 4515(= 22W以降の死産数 3637 +早期新生児死亡 878)
新生児死亡 1167  乳児死亡 2450

人工死産も含めた妊娠全期間のデータでは、
死産 26571(= 自然死産 12251 + 人工死産 14320 ) という結果でした。
年間、およそ3万人を超える小さな命がなくなっていることになります。

また、流産のうち、ほとんどの自然流産は12週までにおこります。
総数は把握されていませんが、妊娠の10-20%が流産となる(日本産婦人科学会ホームページより)とされています。


◆当初の悲しみについて
こうした統計上の数字の、ひとつひとつの「死」のむこうに、それぞれの深い悲しみがあります。
医療検査技術の進歩により、ごく小さな胎芽の時期から、親たちは、我が子の姿を確認できるようになりました。体外受精などの不妊治療では、移植前の受精卵すら見ることができます。
その姿を見たときから、親としての意識が生まれたとしても不思議な事ではありません。

赤ちゃんを望む人々にとって、妊娠は、大きな喜びです。
妊娠を知ってから、我が子への想いを持ち始める人もいることでしょう。
家族ごとに、様々な妊娠への想いがあり、妊娠の経過があることでしょう。
母親は、妊娠を知った日から、少しずつ、生まれてくる子への想いをはぐくんでいきます。
父親は、初めは実感がないかもしれませんが、母親の変化を見ながら、やはり少しずつ、想いを育てていくことでしょう。
授かった小さな命と別れることは、多くの親たちにとって、とてもつらいことです。
その別れは、思いもかけない時に、突然にやって来る場合が多いのです。
その出来事が、両親それぞれにとて、ショックであったとしても当然のことです。

◆周産期の喪失体験とケアで求められること
産後の体の回復という課題と、深い喪失感、悲しみになかで、当事者は日々を過ごしていきます。
体験者たちは、よくこう話します。
「赤ちゃんが亡くなって、世界が変わってしまった」と。
それまで持っていた、価値観や考え方を変えるほどの、大きな影響を与える出来事であることを示している言葉です。
その変化のなかで、当事者たちは、何とか日々を過ごし、頑張っています。
しばらくは、とめどなく流れる涙と格闘するかもしれません。
周囲からの、配慮のない言葉に、傷つくことがあります。
ひとには会いたくないと思う気持ちになることもあります。
その一方で、我が子のことを声に出して話したいという気持ちもあります。
様々な想いを抱えて、日々揺れています。
周産期の死別体験者と接する時で、大事なことは、
「親であること」や「亡くなった命を」認め、尊重していくことであると、
これまでの活動で出会った、多くの体験者たちから教えていただきました。
私たちは、お子さんを亡くされた方へのケアを真剣に考えてくださる医療関係者のみなさんや周囲の方々に、体験者のこうした心の動きをこれからも伝えていきたいと思います。

◆より良いケアへ
そして、
近年、この領域にかかわる医療関係者、研究者の関心は深まりつつあります。
様々な学習会や研修が開かれ、より良いケアへの動きがあります。
WAISの活動を通して出会う患者さんたちのお話からも、患者へのケアは、確実に進歩している事を感じます。
こうしたケアが、日本全国どこにいても、受けられるような時代になることを願っています。

死別の心の痛みに変化が起こるまで、とても長い時間がかかります。
もしも、体験者の周囲の方がサポートしたいと思われるときには、ゆっくりとかたわらで見守るゆとりを持っていただきたいと願っています。


                              


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